犬インフルエンザは何から感染する?治療法や人への感染の可能性について

犬インフルエンザ犬の健康
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毎日、お疲れさまです。

今回は感染症のひとつである犬インフルエンザについて調べてみました。

  • 犬インフルエンザの原因ウイルス
  • これまでの発生状況
  • 発生した場合の症状
  • 治療法、予防法、ワクチンについて
  • ヒトにうつる可能性

などについてまとめていきます。

興味があればお付き合いくださいませ。

犬インフルエンザの原因ウイルス

インフルエンザは抗原性の違いによりA型、B型、C型に分類されます。

犬インフルエンザは、このうちA型インフルエンザウイルスが原因の感染症です。

A型インフルエンザはヘマグルチニン(A)とノイラミニダーゼ(A)の組み合わせにより、H1N1型、H5N1型、H3N8型などさまざまな型に分類されます。

これまでの発生状況

これまでの犬インフルエンザの発生状況(一部)を時系列にまとめると以下のとおりです。

2004年1月フロリダ州H3N8亜型ドッグレース場でグレイハウンドが発症
2004年6月~8月アメリカの6州H3N8亜型14のレース場で発症体が報告される
2004年タイH5N2亜型鳥から犬に伝播
2005年アイオワ州H3N8亜型ドッグレース場でグレイハウンドが発症
2005年日本H3N2抗体ヒトから犬に伝播
2006年中国H3N2亜型鳥または犬(疑い)から犬に伝播
2007年オーストラリアH3N8亜型馬から犬に伝播
2007年韓国H3N2亜型鳥または犬(疑い)から犬に伝播
2010年韓国H3N1亜型犬から犬に伝播
2012年タイH3N2亜型鳥の加工餌を食べたことにより感染したと推定
2015年シカゴ近郊H3N2亜型シェルターなどを中心に犬から犬へ感染拡大

2004年:フロリダ州の事例

2004年、アメリカのフロリダ州で、ドッグレース用に飼育されていたグレイハウンド22頭に呼吸器疾患の集団感染が発生しました。

これが、犬インフルエンザの初めての発症報告となります。

そのドッグレース場は競馬場としても利用されており、かつ、犬たちから検出されたウイルスは馬インフルエンザウイルス(H3N8)に似ていたため、近くにいた馬から犬へ感染が広がったものと考えられました。

残念なことに、その時発症したグレイハウンドのうち、8頭が出血性肺炎で亡くなっています

その後、同年6月~8月、アメリカ6州14カ所のドッグレース場でも感染が確認されました。

2004年:タイの事例

2004年、タイでアヒルの死骸を食べた犬が死亡し、この犬から高病原性H5N1鳥ウイルスが分離されました。

これにより、鳥インフルエンザウイルスも犬に感染する(哺乳類ではない動物からも感染する)ということが判明しました。

2005年:アイオワ州の事例

2005年、アメリカのアイオワ州の2カ所のドッグレース場で、2004年と同じくグレイハウンドの集団感染が確認されました。その際、すべての個体が発症し、ほとんどは治癒しましたが、5%以下の犬で死亡事例(死因は同じく出血性肺炎)も発生しています。

これもH3N8亜型のウイルスが原因でした。

2007年:韓国の事例

2007年、韓国で鳥ウイルス(H3N2)から犬へ伝播したことによる、犬インフルエンザウイルスの感染事例が報告されています。

感染拡大も見られ、その中には犬から犬への感染もあったのではないかと目されており、死亡した犬では重度の気管支炎などの呼吸器障害が見られました。

この時のさまざまな調査により、その2年も前の2005年から、すでにH3N2犬ウイルスが韓国内に拡散していたことが判明しています。

2012年:タイの事例

2012年、タイでH3N2犬ウイルスが検出されました。

これら、アジアで見つかったH3N2犬ウイルスは遺伝子がとても似ており、同じ鳥インフルエンザウイルスが共通のルーツであることが判明しています。

感染経路は、

  1. 鶏肉を扱う市場
  2. ウイルスを持った鳥肉で作られた餌
  3. 診察を受けた動物病院

と推察され、3のケースでは「犬から犬への感染」が疑われる事例もありました。

2015年:シカゴ近郊の事例

2015年、シカゴ近郊で1,000頭を超える犬に呼吸器疾患をともなう犬インフルエンザの集団感染が発生しました。

感染の中心となったのは犬の集団飼育施設で、アジアからシカゴに連れてこられた犬が持っていた、当時アジアで流行していたH3N2犬ウイルスが原因でした。

※シカゴに連れてこられたのは、アジアで食用になる運命だった犬を助けるため

本ウイルスはアメリカ全土に拡大し、2017年までに約20州で報告されています。

また、本ウイルスは猫にも感染することがわかっています。

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犬インフルエンザのり患率と感染経路

り患率は100%!

り患率とは、その病気にかかる確率をいいます。

犬インフルエンザウイルスに接触した場合、すべての犬は感染り患率100%)します。

また、感染しやすい犬種や年齢などは特になく、すべての犬に感染するおそれがあるため、もともと呼吸器が弱い子や、免疫力が低下している子のいる家庭では特に注意が必要といえます。

何から感染している?

これまでの事例から、感染経路を抜きだしてみると以下のとおりです。

  1. 鳥、鳥肉加工品
  2. 動物病院で使用された器具など
  3. 感染した犬(犬の咳、吠えたときの飛沫、おもちゃについた唾液など)
  4. 感染した犬に接触したヒト

また、犬インフルエンザウイルスはおおよそ48時間は感染力が持続するため、感染した犬が使用したケージなどは消毒後、念のため48時間以上使用しない方がいいでしょう。

(以下、「予防法について」で詳しく記載します)

犬インフルエンザの症状

犬インフルエンザに感染すると、2~5日間の潜伏期を経たのち発症します。

前述のとおり、り患率は100%ですが、症状が現れるのは感染した犬のうち75~80%で、20~25%の犬では症状がありません

り患率、発症率ともに高いウイルスですが、ありがたいことにほとんどの個体で症状は軽症です。

軽症の場合

急性の呼吸器症状(軽度)、くしゃみ、発熱、鼻水、食欲不振などが見られますが、いずれの症状も軽く、持病や合併症などがなければ2~3週間のうち※に回復します。

(※別の論文によると10日~30日間は湿った咳が続くともあります。)

重症の場合

犬インフルエンザウイルスに感染中に、さらに他の細菌などに感染した(二次感染)、もしくはウイルスが体内で増殖したなどの悪条件が重なると、重症化する場合があります。

重症化すると、40℃以上の高熱、肺炎を起こして、最悪の場合死亡します。

2004年の初報告事例では8頭/22頭で死亡率は約36%とかなり高いですが、全体的な致死率10%以下(別論文では5~8%)とされています。

治療法と予防法、ワクチンについて

治療法について

今、出ている症状に対する治療(対症療法)と栄養管理を両立して行っていく必要があります。

絶対にしてはいけないことは「ヒト用のインフルエンザ薬を犬に与えること」。

人体用の抗インフルエンザ薬を動物に使用することは認められていません。

インフルエンザ薬に限らずですが、ヒト用の薬を自己判断で与えることは危険ですので、絶対にしないようにしてください。

脱水を起こすことがあり得ますので、十分に水を飲ませつつ、あまり無理をさせないようにゆっくり過ごさせることが大切です。

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予防法について

感染した犬のケージなどウイルスの付着が疑われるものについては消毒薬洗剤で洗うことで感染力を失わせることができます。

熱にも弱く60℃のお湯で30分加熱することでも不活性化するとされています。

犬インフルエンザウイルス自体はおおよそ48時間は感染力が持続するため、感染した犬が使用したケージなどは消毒後、念のため48時間以上使用しない方がいいでしょう。

感染した犬は発症後7日程度ウイルスを排出し続けるため、症状が現れてから念のため10日程度は、排せつ物の処理に気をつけ、犬が使用した食器やおもちゃなどの消毒や洗浄をこまめに行うことが重要です。

ウイルスの感染力

また、馬や鳥などの食肉を犬に与える場合、しっかりと加熱してから与えるようにしましょう。

ワクチンについて

2006年の論文では「ない」とされてた犬インフルエンザウイルスのワクチンですが、アメリカにおいて2009年にH3N82015年にH3N2犬用不活化ワクチンが実用化されています。まさに日進月歩ですね。

2020年8月現在、動物医薬品で探してみたところ、表示されているインフルエンザ薬は牛、馬、豚、鳥のみでした。日本で実用化されているかは不明ですので、詳しく知りたい方は、かかりつけの獣医師に尋ねてみられてください。

現在、国内でも使用されている6種混合ワクチンなどには「犬パラインフルエンザウイルス(CPIV)」が含まれていますが、このワクチンの対象となるウイルスは、パラミクソウイルス科ルブラウイルス属に属すると思われるものです(※属すると思われる……正式には未分類だそうです)

オルトミクソウイルス科に属する犬インフルエンザウイルスとは対象が異なるため、犬パラインフルエンザウイルス用ワクチンは犬インフルエンザウイルスを予防するものではありません。

(犬インフルエンザを予防するために、上記H3N8やH3N2犬用不活化ワクチンが開発されたのですね)

ヒトにうつる可能性はある?

これまで日本で報告されている事例は「ヒトから犬に伝播した」というもので、「犬からヒトに伝播した」という事例、および「犬同士で集団感染した」という事例(証拠)はありません

1971年ころに、2004年にフロリダで馬→犬に伝播したH3N8亜型ウイルスが日本国内でも流行したことがありましたが、馬間での感染にとどまり、犬やヒトへの感染は起こっていません。

また、韓国やタイで発生した鳥インフルエンザ(H3N2亜型)ウイルスは、そもそも日本では報告されておらず、ヒトへの感染はおろか、犬への感染事例もありません。

とはいえ、ウイルスの変異は珍しいものではなく、ことインフルエンザウイルスに関しては毎年変異を起こしています。

現在までに判明しているインフルエンザウイルスについては、日本において馬や鳥から犬に感染が広がる可能性は極めて低いと考えられているようですが、今後、たとえば既存の豚インフルエンザウイルスが豚から犬へ、そして犬からヒトへうつるように変異する可能性もありますし、また海外から食肉などを通じて新しいウイルスが持ち込まれる可能性もあります。

残念ながら、「犬からヒトに感染することはない」とは言い切れない、というのが現状のようです。

まとめ

ということで、犬インフルエンザウイルスについて調べてみました。

個人的意見をまとめると、

感染力は強いが、ウイルス自体はそれほど強くなく、ほとんど軽症で2~3週間ほどで回復する。過剰に恐がる必要はないウイルス

という印象を受けました。

ですが、現時点では、犬からヒトへの感染は起こっていないというだけで、今後、ウイルスが変異して、犬からヒトにうつるウイルスが出現する可能性がないわけではありません。上述のとおり、海外からヒトやモノにくっついて入ってくる可能性もなきにしもあらずです。

また、可能性は極めて低いとはいえ、愛犬が感染した場合には重症化するおそれもあります。

念のため以下の予防対策を行い、犬インフルエンザウイルスだけではなく、いかなるウイルスにもできるだけ愛犬が感染しないよう、保護者さんがしっかり気をつけてあげましょう。

▼予防対策

  1. 咳やくしゃみをしている子には近づかない
  2. お散歩後は、足や身体を動物用の除菌ウエットティッシュなどで拭く
  3. 動物病院など犬が集まる場所に行った場合も、愛犬の身体を動物用の除菌ウエットティッシュなどで拭く
  4. 連れて行った際のケージなども消毒する
  5. 生肉を触った手で愛犬に触らない(手を洗う)
  6. 食肉はかならず加熱して与える
また、万が一、愛犬にインフルエンザの症状があった場合には、集団感染を防ぐため動物病院を受診する前に必ず電話をして状況を伝えその後、獣医師の指示に従った方法で動物を診察に連れて行くようにしてくださいね。

 

最後までお付き合い、ありがとうございました('v')

 

【参照】
■堀本泰介氏著,イヌインフルエンザ,日獣会誌,2017
■丸山総一氏著,犬及び猫のインフルエンザ-公衆衛生委員会(日本獣医師公衆衛生部会常設委員会)の見解,日獣会誌,2006

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