毎日、お疲れさまです。
さて、今回はいろいろ気になるお金の話シリーズ。
動物病院の診療にかかる費用について調べていきたいと思います。
さっそくですが、みなさんはペット友だちと話している時、こんな会話になったことはありませんか?

え? ワクチン代○○円もしたの? うちは△△円だったよ~

ええっ!! なにそれ聞いてない!!
ご存知の方も多いと思いますが、診療報酬が全国一律の公定価格に設定されていて、健康保険さえ適用されれば日本全国どこの医療機関でも同じ価格で医療を受けられる人間と異なり、動物病院の診療報酬設定は全国一律ではありません。
(診療点数法による加算があるので、人間の医療費も実際には同じ価格になることは少ないですが……。)
なぜかというと『料金設定を一定にすることを法律(独占禁止法)が禁止しているため』だそうです。
獣医師の診療料金は、独占禁止法により、獣医師団体(獣医師会等)が基準料金を決めたり、獣医師同士が協定して料金を設定したりすることが禁じられています。
つまり、現行法のもとでは獣医師は各自が料金を設定し、競争できる体制を維持しなければならないことになっております。
したがって動物病院によって料金に格差があるのはやむを得ない状況と言えます。この点についてどうかご理解ください。
■参照元:公益社団法人日本獣医師会
ですので、診療費、処置料、手術費、ワクチンの費用はおろか、薬の料金までも、各動物病院が自由に設定することができることになっています。
そのため、同じ内容の治療を受けたり、同じワクチンを接種したりした場合でも病院によって料金が異なることがある、というわけですね。

そういうことなんだって

そ、そうなんだ……
そうなると、ちょっと気になることがありますよね。
そう。

はたして愛犬がお世話になっている病院の診察料金は高いのか、はたまた安いのか……
これについては、先で引用させていただいた日本獣医師会のHPに掲載されていますので、詳しくはそちらを見ていただきたいなと思うのですが、せっかくなので私が気になった部分について抜き出してみたいと思います。
興味があれば、お付き合いくださいませ。
表1.日本獣医師会HPデータの一部(診察料・処置費など)
まずは、日本獣医師会のホームページに掲載されているデータについて、いくつか抜き出してみましょう。
名目 | 中央値 | |
【診察料】 | 初診料 | 1,386円 |
再診料 | 726円 | |
往診料 | 2,232円 | |
時間外診療(平日) | 2,324円 | |
時間外診療(休診日) | 2,646円 | |
時間外診療(深夜) | 4,513円 | |
【入院料】 | 犬・小型 | 2,729円 |
犬・中型 | 3,491円 | |
犬・大型 | 4,201円 | |
犬・特大 | 4,753円 | |
猫 | 2,619円 | |
ICU | 3,788円 | |
【文書料】 | 診断書 | 1,983円 |
【注射料】 | 皮下注射 | 1,425円 |
筋肉注射 | 1,433円 | |
静脈注射 | 1,812円 | |
経留置針注射 | 2,117円 | |
【輸液】 | 静脈内 | 2,999円 |
皮下 | 1,952円 | |
狂犬病予防接種 | 2,944円 | |
犬混合ワクチン(5種・6種) | 6,388円 | |
犬混合ワクチン(8種~10種) | 8,180円 | |
猫混合ワクチン(Felv含む) | 6,514円 | |
【輸血】 | 犬 | 10,542円 |
猫 | 10,283円 | |
【一般処置】 | 点眼 | 143円 |
点耳 | 324円 | |
点鼻 | 150円 | |
洗浄 | 1,334円 | |
爪切り | 725円 | |
肛門嚢圧出 | 739円 | |
【カテーテル留置】 | 血管確保 | 1,922円 |
食道 | 4,228円 | |
胃 | 6,845円 | |
尿道 | 2,687円 | |
【人工透析】 | 血液透析 | 15,000円 |
【泌尿生殖器】 | 分娩助産 | 4,900円 |
難産介助 | 6,238円 | |
【眼科】 | 結膜異物除去 | 963円 |
睫毛処置 | 1,126円 | |
【耳鼻科】 | 外耳処置 | 1,256円 |
【歯科・口腔外科】 | 歯石除去 | 8,849円 |
抜歯 | 3,491円 | |
【緊急処置】 | 心肺蘇生(非開胸) | 5,871円 |
心肺蘇生(開胸) | 20,238円 | |
【麻酔料】 | 局所麻酔 | 2,085円 |
硬膜外麻酔 | 5,556円 | |
鎮静 | 3,326円 | |
全身麻酔 | 10,020円 |
表2.日本獣医師会HPデータの一部(検査・手術・治療費など)
名目 | 中央値 | |
【不妊治療】 | 猫去勢 | 12,652円 |
犬去勢 | 17,675円 | |
猫避妊(卵巣子宮切除) | 20,986円 | |
犬避妊(卵巣子宮切除) | 27,413円 | |
【眼】 | 緑内障 | 17,419円 |
白内障 | 10,000円 | |
【耳】 | 耳血腫 | 17,874円 |
【呼吸器】 | 気管虚脱 | 41,000円 |
横隔膜ヘルニア | 47,259円 | |
【消化器】 | 胃切除 | 50,000円 |
腸切除・吻合 | 46,397円 | |
直腸脱 | 32,392円 | |
【肝臓・胆嚢・脾臓】 | 肝葉切除 | 50,572円 |
胆嚢切除 | 54,315円 | |
脾臓摘出 | 43,510円 | |
【泌尿器】 | 腎臓摘出 | 49,150円 |
腎臓切開 | 48,962円 | |
尿管切開 | 44,309円 | |
膀胱腫瘍切除 | 45,714円 | |
【生殖器】 | 子宮蓄膿症 | 41,131円 |
子宮腫瘍 | 41,122円 | |
前立腺腫瘍 | 45,133円 | |
【体表】 | 肛門周囲腺腫 | 30,867円 |
肛門嚢切除 | 32,201円 | |
臍ヘルニア | 19,460円 | |
【整形外科】 | 上腕骨骨折 | 49,410円 |
大腿骨骨折 | 51,448円 | |
骨盤骨折 | 67,411円 | |
【血液検査】 | 採血料 | 727円 |
生化学検査 | 4,625円 | |
フィラリア検査(抗原検査) | 2,113円 | |
【糞便検査】 | 採取料 | 0円 |
直接法 | 737円 | |
【尿検査】 | 採取料(圧迫) | 0円 |
採取料(カテーテル採尿) | 1,127円 | |
【皮膚検査】 | 被毛検査 | 862円 |
【生検】 | 細胞診(採取料) | 651円 |
組織診(内視鏡下) | 11,098円 | |
【エックス診断】 | 単純透視 | 3,354円 |
造影透視 | 5,921円 | |
【超音波検査】 | 心エコー | 3,698円 |
腹部エコー | 3,204円 | |
【MRI検査】 | MRI検査 | 50,000円以上 |
【健康診断】 | 1日ドッグ | 14,021円 |
表2についての補足
各アンケートは、「体重 10kg での料金をお知らせください」という条件のもとで動物病院に提示されていました。おそらく、検査や手術などの費用は犬の大きさによって変わるためでしょう。
ということで、10kg以下の小型犬や10kg以上の中型・大型犬では中間値は異なると思います。その点、ご承知おきください。
さて、【中央値】というのはおそらく「回答があった中での平均値」のことかと思われます。

うちのかかりつけ医は中央値より安いみたい

うーん、こっちは全体的にちょっと高めかも

私のかかりつけ病院の料金はだいたい中央値か、もしくはそれよりほんの少しだけ安いかなぁ、という感じです
くりかえしますが、上記の表は日本獣医師会の調査資料のほんの一部です。

全部知りたい!
という方は日本獣医師会のホームページから、ご確認いただければと思います。
上記表1、2を見る上での注意点
この日本獣医師会の調査資料をお読みいただければ、すぐにわかることなのですが、
本調査結果は、平成26年に実施した実態調査により、全国1,365名の小動物臨床獣医師及び、3096名の一般飼育者の皆様から得られた回答を元に集計したものです。
■参照元URL:日本獣医師会HP
とあるように、全国すべての動物病院に対して行ったアンケートではありません。
ちなみに、平成26年度に日本にどれだけ動物診療施設があったかというと【農林水産省の都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況】によれば15,198。
同じ施設に獣医師が多数勤務することもあるでしょうから、獣医師数で考えればもっと多い。
ということは、このアンケートは少なく見積もっても全国の10%ほどからしか聞き取れていない、というわけです。あらら。
とはいえ、今はこのデータくらいしか診療報酬に関するものがないので、こちらを参考にするしかないのですが、全国のうちの10%以下の意見ですから、このデータをもってして

中央値は●●円よ! もうちょっと安くしなさいよ!!

なんてご無体は仰らないようにしてくださいね
要チェックポイントは【差額】
さて。
とりあえず、先に診察料や手術関連費の中央値を見ていただいたわけですが、実は私がお伝えしたいのは、この中央値ではありません。
じゃあ何かというと、それは「差額」
これも見てもらった方が早いので、一部データを抜粋してみますね。
【H.文書料】(診断書)
料金 | 回答件数 | |
1 | 無料 | 118件 |
2 | 500円未満 | 16件 |
3 | 500円~1,000円未満 | 131件 |
4 | 1,000円~2,000円未満 | 417件 |
5 | 2,000円~3,000円未満 | 356件 |
6 | 3,000円~5,000円未満 | 282件 |
7 | 5,000円~7,500円未満 | 26件 |
8 | 7,500円~10,000円未満 | 2件 |
9 | 10,000円~12,500円未満 | 0件 |
10 | 12,500円~15,000円未満 | 0件 |
11 | 15,000円~17,500円未満 | 0件 |
12 | 17,500円~20,000円未満 | 0件 |
13 | 20,000円~25,000円未満 | 1件 |
14 | 25,000円~30,000円未満 | 0件 |
15 | 30,000円~40,000円未満 | 0件 |
16 | 40,000円~50,000円未満 | 0件 |
17 | 50,000円以上 | 1件 |
18 | 対応外 | 10件 |
無回答 | 5件 | |
全体 | 1,365件 |
こちらは、診断書(31頁参照)の作成にかかる費用の調査結果です。
何がいいたいのか、おわかりいただけますでしょうか。
せっかくなので、もうひとつ見てみましょう。
【P-1.不妊手術】(犬去勢)
料金 | 回答件数 | |
1 | 5,000円未満 | 7件 |
2 | 5,000円~10,000円未満 | 143件 |
3 | 10,000円~15,000円未満 | 280件 |
4 | 15,000円~20,000円未満 | 443件 |
5 | 20,000円~25,000円未満 | 274件 |
6 | 25,000円~30,000円未満 | 96件 |
7 | 30,000円~40,000円未満 | 41件 |
8 | 40,000円~50,000円未満 | 7件 |
9 | 50,000円~75,000円未満 | 1件 |
10 | 75,000円~100,000円未満 | 3件 |
11 | 100,000円~150,000円未満 | 9件 |
12 | 150,000円~200,000円未満 | 17件 |
13 | 200,000円~250,000円未満 | 8件 |
14 | 250,000円~300,000円未満 | 2件 |
15 | 300,000円以上 | 3件 |
16 | 対応外 | 18件 |
無回答 | 13件 | |
全体 | 1,365件 |
こちらは、もっと開きが大きいですね。
一番多い回答の15,000円~20,000円(443件)に対して、最高額では30万円以上かかる病院も。

その差、28万円以上……

も、もしかしたら、入院室が最高級スイートみたいな部屋で、保護者さんも一緒に泊まれるプランなのかも!!

いや……求めてない……
それに、診断書だって無料のところはただのコピー用紙なのが、5万円以上のやつは最高級手漉き和紙に有名書道家が毛筆で書いてくれるのかもしれませんしね!(汗)
……なので、まぁ、一概に料金だけで批判したりはできないとは思いますが、公的保険のない動物を育てていらっしゃる方には「同じ治療内容でも、病院によってこれだけ差があることがあるんだよ」ということだけはお伝えしときたいと思った次第であります。
まとめ
かかりつけの動物病院(獣医師)を決める際に、最も大事なのはその病院ないし獣医師を信用できるかどうかだと思います。
そして病院の会計が不透明というのは、とても獣医師不信につながりやすいです。
たとえば、手術代が他の病院より高かったとしても、

どこの病院で受けても開腹手術&1週間の入院が必要だけど、本病院には日本に1台しかない最新機器があるので、開腹することなく日帰りで治療ができるんですよ
という説明が事前にあっていれば、30万円以上高くても納得できますよね。
かかりつけ医を決める際は、獣医師の技術や経験、人柄はもちろん大事ですが、会計がクリアかどうかも、しっかり見極めるようにしていただきたいと思います。
最後までお付き合い、ありがとうございました('v')
公益社団法人日本獣医師会(http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin.html)
農水省HP(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/animal/)
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