毎日、お疲れさまです。
今回は犬に必要なビタミンのひとつ「葉酸」についてまとめます。
手作り食の栄養バランスで悩んでいる方、葉酸のサプリメントを買うべきかお悩み中の方にご一読いただければ幸いです
忙しい方のための三行まとめ
- 葉酸は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり54㎍が必要
- 今回はアスパラガス、さやえんどう、オクラ、ブロッコリーを計算
- 愛犬が療法食など食事療法中の場合は自己判断で追加しないでください
葉酸とは
葉酸とは、ビタミンB群に所属し「ビタミンB9」と表示されることもある、水溶性ビタミンのひとつです。
緑黄色野菜(葉の部分)や肝臓(レバー)に多くふくまれており、あまり体内に蓄積されないため、毎日適切な量を食事などから摂取する必要があります。
葉酸の3つの働き
1.造血作用
葉酸の働きを活性化するビタミンB12と協力して、新しい赤血球を作ります。
葉酸を摂取する場合は、ビタミンB12も一緒に摂取するようにするとより良いでしょう。
2.細胞分裂するときに正確にコピーする作用
細胞が分裂する際、細胞のもつDNAを正確にコピーする作用を持ちます。
このはたらきのため、「神経管閉鎖障害」という胎児の先天異常を予防対策として、ヒトでは妊婦さん(特に妊娠初期)に適切に摂取することが推奨されています。
妊婦さんだけではなく、細胞分裂がさかんな成長期の子どもにも必要な栄養素です。
3.動脈硬化の予防
葉酸やビタミン12を適切にとることで動脈硬化を促進する「ホモシステイン」という悪玉アミノ酸から、血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取りのぞく作用をもつ「メチオニン」を合成します。
その結果、血管をせまくしたり、血液の流れをせき止めたりといった悪さをするホモシステインが少なくなり動脈硬化を予防します。
犬がとるべき葉酸の量(推奨量)はどのくらい?
犬がとるべき栄養の基準については大きく3つあり、そのいずれの基準をとるかで若干数値は変わってきます。
AAFCO(2016) | NRC(2006) | FEDIAF(2008) | |
成長期 | 54μg | 67.5μg | 67.5μg |
維持期 | 54μg | 67.5μg | 45μg |
※いずれも1,000kcalあたり
- AAFCO……米国飼料検査官協会
- NRC…… 米国学術研究会議
- FEDIAF……欧州ペットフード工業会連合
どの基準が正解、ということではないのですが、今回はAAFCOの基準にしたがって計算しようと思います。
AAFCOの基準はあくまで市販のペットフードを作るときの基準だから、手作り食の場合はNRCの基準を使用すべきだ、という意見もありますが、今回はAAFCOの基準にしたがって計算していきたいと思います。
下記の計算方法は一緒です。
NRCの基準を使いたいという方は、(54)と記載している箇所を(67.5)に変えて計算してみてくださいね。
葉酸をとるうえでの注意点
ペットフードのパッケージに「総合栄養食」と書かれたものを与えている場合、そのフードの中に葉酸はちゃんとふくまれています。
消費期限内の総合栄養食を与えているのであれば、とくに葉酸を追加して与える必要はありません。
葉酸が不足すると、どんな問題がある?
- 悪性貧血(巨赤芽球貧血)
- 白血球減少
- 舌炎・口内炎・皮ふ炎
- 食欲不振
- 二分脊柱を含む精神神経異常
などを生じるおそれがあります。
葉酸を過剰にとりすぎると、どんな問題がある?
食べ物を食べているだけでは、葉酸の過剰摂取が問題になることはなく、現在のところ、犬や猫に関しては葉酸の過剰による中毒は報告されていません。
しかし、サプリメントなどを使用した場合に、以下のような症状(葉酸過剰症)が起こる可能性があります。
- 亜鉛の吸収が阻害されることで起こる胃腸障害、皮ふ炎、免疫機能の低下
- 葉酸がビタミンB12の働きをカバーしてしまうため、ビタミンB12欠乏症に気づかず、ビタミンB12欠乏症が進行するおそれがある
- ヒトでは、妊娠後期にサプリメントを1mg/日摂取した場合、胎児に喘息発症のリスクが高まるおそれがある
葉酸をふくむ犬用のサプリメントを与える場合には、必ず説明書に記載された容量を守るようにしてください。
ちなみに、犬の基準には最大値は設けられていませんが、ヒトの場合には耐容上限量は推奨値の約2~4倍です。
愛犬に必要な葉酸がとれる4つの野菜(※1日の必要エネルギーが300kcalの犬の場合※)
肝臓(レバー)や菜の花、卵黄やニラなど葉酸を含む食べ物はたくさんありますが、今回は以下の私的ルールに則って4つの野菜を選んでみました。
- 犬が食べて問題のないもの
- 葉酸以外の栄養成分で過剰症をおこす心配がほぼないもの
- 全国的にスーパーなどでよく見かけ、簡単に手に入るもの
- 調理方法が簡単なもの
以下の計算は1日の必要エネルギーが300kcalの場合で計算しています。
計算式は以下の赤枠のなかに書いていますので、自分の愛犬の必要カロリーに変えて計算してみてください。
ゆでたアスパラガス:約1/2本
【ゆでたアスパラガス】にふくまれる葉酸の量:100gあたり180μg
1,000kcalあたり54μgが最少量ですので、仮に1日の必要カロリーが300kcalの犬の場合、(300×54)÷1,000=16.2μgが最少量となります。
アスパラガスには100gあたり180μgの葉酸が含まれますので、アスパラガスだけから葉酸を摂取しようとするならば、1日あたり9g食べる必要がある、という計算になります。
ゆでたアスパラガス1本で16gほど、とのことですので1/2本くらいですね。
アスパラガスにふくまれる成分のうち、βカロテンとカリウムが少し高めですが、βカロテンは過剰摂取してもとくに問題はありませんし、カリウムもアスパラガス10g程度であればAAFCOで定められたカリウム最少量の1/17にしかなりませんので心配ありません。
ゆでたさやえんどう:約14~15さや
【ゆでたさやえんどう】にふくまれる葉酸の量:100gあたり56μg
かりに1日の必要カロリーが300kcalの犬の場合で、さやえんどうだけから葉酸を摂取しようとするならば、1日あたり28.9gを食べる必要がある、という計算になります。
ゆでたさやえんどう1さやで2gほど、とのことですので14~15さやくらいです。アスパラガスに比べると少し多いですね。
さやえんどうもβカロテンが高めですが、βカロテンは体外に排出されますので特に心配はありません。
ゆでたオクラ:約1.5本
【ゆでたオクラ】にふくまれる葉酸の量:100gあたり110μg
かりに1日の必要カロリーが300kcalの犬の場合で、オクラだけから葉酸を摂取しようとするならば、1日あたり14.7gを食べる必要がある、という計算になります。
ゆでたオクラ1本で10gほど、とのことですので1.5本くらいです。
オクラもβカロテンが高めですが、βカロテンは体外に排出されますので特に心配はありません。
ゆでたブロッコリー:1切れ(中~大サイズ)
【ゆでたブロッコリー】にふくまれる葉酸の量:100gあたり120μg
かりに1日の必要カロリーが300kcalの犬の場合で、ブロッコリーだけから葉酸を摂取しようとするならば、1日あたり13.5gを食べる必要がある、という計算になります。
枝分かれした部分から一口サイズに切り落とした1切れ(中サイズ~大サイズ)で10g~16gほど、とのことですので中~大サイズ1切れくらいです。
切る大きさによって重さも変わりますので、家庭用の測りで測ると安心ですね。
ブロッコリーにふくまれる成分のうち、βカロテンとビタミンKが少し高めですが、βカロテンは過剰摂取してもとくに問題はありませんし、ビタミンKも脂溶性ビタミンですが、現在まで犬や猫で過剰症の報告はありません。
(ビタミンKはAAFCOの基準にも数値が定められていません。)
野菜を与える場合の2つの注意点
すべての食材の葉酸を合算する
上記にしめした数値は、あくまで「その食材だけで葉酸の最小量を満たすには」という基準で求めた数値です。
手作り食を与えている場合、実際には少なくとも2~3種類の食材をまぜてご飯を作ると思います。そのさいは、すべての食材がふくむ葉酸にも注意してください。
なお、ヒトにおいて、食べ物から摂取した葉酸の体内吸収率は50%ともいわれています。
犬の場合、消化吸収はヒトとことなりますので、どのくらい吸収されるか不明ですが、仮にヒトと同程度であれば、上記の2倍の量を食べないと葉酸の基準値を満たさないことになります。
犬の腸内でも腸内細菌によって多少の葉酸が産出されています。
食事中の葉酸の合計が、上記の最小値を少し上回るくらいの量になるように献立を作るといいですね。
療法食・食事療法中の場合
愛犬が療法食を食べているなど、食事療法中の場合、「少しだけ」とスケジュールにない食べ物を与えることで、せっかくの食事療法計画が台無しになる可能性があります。
葉酸にかぎらずですが、食事療法中の愛犬に何かを与える場合には、自己判断で追加するまえに獣医師に相談してください。
まとめ
今回は皆さんに少しでも正確な情報をお伝えしたかったので少しむずかしい計算をしましたが、私自身は、そこまでガチガチに考えなくてもいいと思っています。
カロリー過剰にならない範囲で、愛犬の様子を見ながら、いろんなレシピを試してみてください。
また、総合栄養食のペットフードを与えている場合でも、ペットフード開封後はどんどんビタミンは失われていきます。

愛犬が喜んでくれるのなら、たまに上記のような野菜をトッピングするのもいいですね

愛犬と保護者さんが楽しみながら食事が出来ますように
最後までお付き合い、ありがとうございました(‘v’)
・AAFCO2016年版における犬猫の栄養素プロファイル概要(前編)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/19/2/19_105/_pdf/-char/ja)
・AAFCO2016年版における犬猫の栄養素プロファイル概要(後編)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/20/1/20_64/_pdf/-char/ja)
・連載講座:イヌ・ネコの基礎栄養(10)ビタミンの役割と要求量(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan1998/5/3/5_135/_pdf)
・七訂食品成分表2019(女子栄養大学出版部)
・参照:栄養成分ナビゲーター(https://www.glico.co.jp/navi/e07-2.html)
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