犬にもジビエの生肉は危険!ジビエ肉を犬に食べさせたい方への注意点

犬と食べ物
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毎日お疲れさまです。

さて、今回はジビエについて調べてみました。

ジビエ(gibier)とは『猟師が狩猟によって捕獲した野生鳥獣』を指すフランス語で、ジビエ肉やジビエ料理という場合、これらの野生鳥獣の肉あるいはその肉を利用した料理を示します。

野生鳥獣には、クマ、イノシシ、シカ、野ウサギ、キジ、カモなどが含まれます。

ここ数年、ペットフードでもよく利用されているのを見かけるようになりましたね。

ただ、ジビエで得た肉は、絶対に生のまま犬に与えてはいけません

以下では、

  • なぜ、ジビエの肉を生の状態で与えてはいけないのか、
  • ジビエの生肉にどんな危険性があるのか、
  • どうしても食べさせたい場合、どうしたらいいか、

などについてまとめていきます。

興味があればお付き合いくださいませ。

ジビエの何が問題?

もちろん、しっかりと衛生管理をされた施設で加工され、かつ、各種検査を経て市場に出ているフードであれば、それを犬に与えることに何の問題もありません

問題は『猟師が獲ったものを、そのまま解体、生肉(冷蔵)の状態で入手したもの』を犬に与える場合です。

以下の文章中に出てくる「ジビエ肉」とは、この『獣医師による寄生虫検査等を受けていない猟師が獲った野生鳥獣の肉』を指します。

生肉食はヒトも犬も厳禁!

もし、ジビエ肉を入手したとしても、ヒトも犬も、絶対に生(冷蔵)の状態では食べないでください。

また、ジビエの生肉に触れた調理器具は摂氏83度以上の温湯で熱湯洗浄・消毒(または200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム等による消毒)をしてください。
※厚生労働省ガイドライン

検疫を受けていない野生動物の肉には、消毒薬にホルマリンを使用しても感染力の落ちないウイルスがいる可能性もあります。

生肉を触る場合、素手では触らず、処分して良いゴム手袋や新聞紙、ビニールシートなどで手や調理場などを保護した方が安全です。

生肉

なぜ生肉は危険なの?

ジビエの生肉が危険と考えられている理由は以下のとおりです。

  1. 飼育管理されていない=何を食べているかわからない
  2. 寄生虫等の検査を受けていない=何らかの病気にかかっていることに気づかない
  3. 危険性寄生虫は胃酸では死なない

飼育管理されていない=何を食べているかわからない

通常、飼育されている動物は食事の管理をされていますが、野生動物は何を食べているかわかりません。

草食動物のシカですら、病原菌をもったサワガニを食べて「ウエステルマン肺吸虫」に感染していた可能性も示唆されています。他動物の死体も食べる雑食動物のイノシシでは、何を食べていても不思議ではありません。

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寄生虫等の検査を受けていない=何らかの病気にかかっていることに気づかない危険性

自分で獲った野生動物を猟師さんが解体する場合、食品衛生法しか守るべき法がありません。(※厚生労働省のガイドラインはあります。)

通常、市販されている加工肉は「と畜場法」により管理されており、同法において、1頭ごとに獣医師による病原微生物や寄生虫の検査(いわゆる「と畜検査」)が行われています。

しかし、食品衛生法では病気又はその疑い、その他の異常で死亡した動物の肉などは使用してはいけないことになっていますが、特段獣医師による検査などは義務とされていません。

検査を経ていないので、その肉のなかに病原微生物や寄生虫がいるのか、いるとしてどのようなモノがいるのかわかりません。

寄生虫は胃酸では死なない

残念ながら、寄生虫は胃酸では死にません。

鮭などに寄生するアニサキスが胃のなかでも長く生存できることは有名ですね。

酸に強い寄生虫や病原微生物は珍しくありません。ジビエに限らず、生ものを食べるときには十分気をつけるようにしてください。

骨を齧る犬

どのような感染症にかかるリスクがある?

では、生肉を食べた場合、どのような感染症にかかるリスクがあるのでしょうか。

以下、感染する危険性がある疾病について、いくつか抜粋して紹介していきます。

いずれも人畜共通感染症(イヌにもヒトにも感染する病気)です。

ジビエ肉を触る場合は、犬だけではなく、ヒトも十分にご注意ください。

E型肝炎ウイルス(HEV)

イノシシとシカの生肉やレバーの生食が原因で起こります。

日本獣医学会ホームページでは「犬はE型肝炎に感染はするものの、肝炎の症状は認められなかった」としつつも「感染するのは事実なので、今後、犬や猫でE型肝炎が発症する可能性」も「ウイルスの性状が変異し、犬や猫に肝炎の症状を引き起こす可能性」も否定できないと記載されています。

慢性消耗病(CWD)

脳内に異常プリオンタンパク質がたまることで発症する神経性の病気で、同じプリオン病の一種に牛海綿状脳症(BSE)があります。

アメリカのミュールジカ、カナダのアメリカアカシカ、ノルウェーのトナカイなどから感染体が見つかっており、プリオン病のなかで唯一排せつ物を介して広がるため、感染しやすく、また一旦感染が広がるとくい止めることは不可能と考えられています。

現在のところ、CWDがヒトに感染するとまでは証明はされていませんが、感染の可能性は否定できない、と考えられており、犬でも同様の危険性があると考えられています。

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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

通常、マダニからヒトに感染するウイルスですが、感染体の体液から接触感染することもあるため、感染したシカやイノシシの肉に触れることで感染する可能性があります。

生肉に触れる場合にはゴム手袋をするなど直接触れないよう注意してください。

腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7

シカ、イノシシ以外にもノウサギ、鳩、ガチョウ、七面鳥そして犬、猫の体内にも存在する菌です。

実験の結果、犬には特に症状が現れなかったとのことですが、数日間、便のなかに生きた菌が確認されたため、犬の便を介してヒトが感染する可能性があります。

1g中に含まれる菌の数が10個に満たないほどの少量でも発症します。野生動物の生肉に触れることはもとより、野生動物の肉を与えていなくても犬の便の取り扱いには十分気をつけてください。

サルモネラ属菌

もともとの体内にも存在しており、保有率は5~25%とされています。

また、犬用ローフードおよび犬用フリーズドライ食品に含まれるサルモネラ属菌を調べたところ、犬用ローフードでは46検体中7検体からサルモネラ属菌が検出されています。

(フリーズドライではサルモネラ属菌は検出されていませんが、それ以外の菌(詳細不明)が検出されています。)

※ローフードとは……加熱しない生の状態、もしくは48℃以下で調理した食材を使用した食品

せっかく愛犬に良かれと思ってローフード(生)を購入した方には大変申し訳ないですが、加熱したほうが安全かと思います。

なお、シカの刺身を食べたヒトでもサルモネラ属菌による食中毒が発生しています。

カンピロバクター(キャンピロバクタ―)

これもシカ、イノシシを含む野生動物、家畜、家禽、ペットを宿主とする菌です。

2015年4月、北海道の焼き肉店でカンピロバクターの感染が原因と考えられる集団食中毒が発生し、14歳の少女が死亡しています。カンピロバクターなどの細菌は肉の表面に付着していることが多いため、肉をしっかり加熱すれば中毒の危険性は減少します。ジビエ以外でも生肉は必ず加熱して食するようにしてください。

また、Zoonosis協会の行った調査では、下痢をしている1歳未満の犬のうち、13.8%にカンピロバクターを保有しているという結果も出ています。(※下痢症状のない1歳未満の犬では0%)

犬の便を片づけたあとは、必ず手を洗うようにしましょう。

野生動物

住肉胞子虫(サルコシスティス)

2011年12月および2015年12月に滋賀県で、また2018年6月に和歌山県でシカ肉が原因と疑われる食中毒事案が発生しています。

サルコシスティスについては、調査したシカ36頭のうち全頭に虫体が確認され、保有率は100%という衝撃的なデータもあります。

馬肉にも住肉胞子虫が寄生しており、ヒトで食中毒を起こすことがありますが、-20℃で48時間以上冷凍すれば失活することが確認されているため、住肉胞子虫に関しては冷凍保存が食中毒の予防法になります。

(※ただし、トリヒナのように冷凍では死滅しない菌もあるため、冷凍→解凍→加熱する方が安全です。)

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トリヒナ(旋毛虫)

日本ではクマの刺身を食べたヒトで感染が確認されていますが、イノシシ、ウマ、ブタも宿主となりえます。

また、台湾の日本料理店で生のスッポンを食べたヒトでも集団発症が起こっています。

筋肉内に寄生し、冷凍に強く-30℃で4カ月保存しても死滅しませんので、十分な加熱が必要とされます。

ウエステルマン肺吸虫

サワガニ、モズクガニが感染宿主です。

雑食性のイノシシがこれらのカニを食べて感染しているケースはもちろん、草食動物のシカからもサワガニのDNAが検出されており、そのシカ肉を生で食べたヒトから肺吸虫症が報告されています。

肺吸虫は冷凍により死滅しますが、トリヒナのように冷凍に強い寄生虫などもいます。

犬用にしてもヒト用にしても、食用に供する場合には加熱処理が必要です。

野生のシカ

ジビエの肉をどうしても食べさせたい場合、どうしたらいい?

厚生労働省のガイドラインにおいて、ジビエ肉を飲食店で提供する場合、

  1. 食肉処理業の許可施設で解体されたものを仕入れること
  2. 十分な加熱調理(中心部の温度が摂氏75度で1分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法で調理する方法)をすること

が条件としてあげられています。

ヒトへの提供が認められているこの2つの条件を満たせば、犬用に提供しても大丈夫かと思います。

冷凍では死滅しない菌や寄生虫もあるため、愛犬にジビエの肉を与える場合には、この2つの条件をクリアしたものを与えるようにしていただくと安心ですね。

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まとめ

最近では、さまざまな野生動物の肉を使用したおやつやフードもたくさん販売されています。

これらのものについては、きちんとした工場で加工され、かつ十分に加熱調理されたものであれば、特に問題はないかと思います。

ですが、愛犬に、獣医師による寄生虫検査等を受けていない、猟師が獲ったジビエ(野生鳥獣)の肉を与えてみようと考えている場合には、感染症または寄生虫のリスクを十分把握したうえで入手し、必ず加熱処理して与えるようにしてください。

愛犬を健康にするために購入したフードで、愛犬が病気にかかっては本末転倒です。

また、調理に使用した包丁などの調理器具についても、生肉の処理終了ごとに摂氏83度以上の温湯で熱湯洗浄・消毒(または200ppm以上の次亜塩素酸ナトリウム等による消毒)をするなど、保護者さん自身が何らかの病気に感染することがないよう、取り扱いには十分に気をつけてくださいね。

特に子犬や子猫、小さいお子さんや高齢者など免疫力が低い方がいらっしゃるご家庭では十分にご注意ください。

最後までお付き合い、ありがとうございました(´ⅴ`)

 

【参照】
■厚生労働省:野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)について
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000065509.pdf)
■渡辺隆之氏著,生肉ジビエ料理の危険性,ペット栄養学会誌18(2),2015
■渡辺隆之氏著,ジビエの生食の危険性,ペット栄養学会誌21(1),2018
■湯川尚一郎氏著,日本における犬用非加熱フード(ローフード)からのサルモネラ属菌検出状況調査,ペット栄養学会誌21,2018
■山本薫氏ら著,Sarcocystis属が寄生していた鹿肉を生で喫食したことによる食中毒事例,日獣会誌73,2020
■松尾加代子氏ら著,シカ肉の生食による肺吸虫感染の可能性,日獣会誌71,2018
■楠博文氏ら著,腸管出血性大腸菌O157:H7の犬腸管内における挙動,日獣会誌57,2004
■日本獣医学会2017/9/4解答(https://www.jsvetsci.jp/10_Q&A/v20170904.html)
■荒島康友氏ら著,イヌ、ネコからの感染が考えられるカンピロバクター腸炎―4月報道の食中毒死亡例は初症例か―,大塚薬報,No.706,2015

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