犬にネギ類がダメな理由は?原因物質と誤飲時の対処法まとめ

犬の食べ物

毎日、お疲れさまです。

さて、今回のテーマは、犬猫と「ネギ類」について。

犬猫に「ネギ類」がよくないということは、数多のメディアで取り上げられており、すでに多くの方の知るところとなっています。

なので、いまさらな感じもしたのですが、少し情報が錯綜している所もありますので、私なりにまとめてみようかと思います。

犬猫が「ネギ類」を摂取するとどうなるのか、

悪影響をもたらす原因物質は何なのか、

「タマネギ中毒」を発症するとどうなるのか、

どのくらいの量を食べたら危険なのか、

犬猫が誤食してしまった時はどう対処したらいいのか、など。

既知のことが多いかもしれませんが、復習のつもりでお付き合いいただければ幸いです。

「ネギ類」に該当する植物

ネギ

・アサツキ(浅葱)・セイヨウネギ(西洋葱)

・ワケギ(分葱)

・タマネギ(玉葱)、長ネギ(長葱)

・ニラ(韮)

・ニンニク、ギョウジャニンニク(行者大蒜)

・ノビル(野蒜)

・ラッキョウ

など、【ヒガンバナ科 ネギ亜科 ネギ属】に属するものをすべて含みます。

なお、これまで用いられていた「クロンキスト体系」などでは、これらネギ類は「ユリ目 ユリ科」に分類されていますが、1990年代以降に登場した「APG体系」では「ヒガンバナ科」に分類されています。

ここでは現在の主流である後者に基づいています。

以下、これら「ヒガンバナ科 ネギ亜科 ネギ属に属するもの」を総称して「ネギ類」と表します。

Q.犬猫が「ネギ類」を摂取するとどうなるの?

A.【タマネギ中毒】になる可能性があります

これら「ネギ類」には複数の「有機チオ硫酸化合物」という物質が含まれています。

これが犬猫の体内に入ると、赤血球のヘモグロビンを酸化させ「ハインツ小体」という物質に変えてしまいます。

「ハインツ小体」に変化してしまったヘモグロビンは、脾臓などで破壊され溶血します。

文字どおり血が溶かされてしまうため、赤血球の数が急激に減少。

重度の貧血を引き起こします。

これが、いわゆる「タマネギ中毒(ネギ中毒)」という状態です。

原因物質に関する考察

原因物質は「有機チオ硫酸化合物」? それとも「アリルプロピル ジルスフィド」?

さて、このタマネギに含まれる成分のうち、タマネギ中毒を引き起こしている原因物質は「アリルプロピル ジルスフィドである」とする見解があります。

有機チオ硫酸化合物」と「アリルプロピル ジルスフィド

原因物質として一体どちらが正しいのか、少し長くなりますがまとめてみます。

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1931年、Gruhzit氏によって、タマネギが犬に与える影響について、以下のような報告がなされました。

タマネギオイルの主成分に「n-propyl disulfide(エヌ‐プロピル ジルスフィド)」という物質がある。これを犬に経口投与するとハインツ小体性溶血性貧血を引き起こすことが各種実験により証明された。

この報告に基づき「犬のタマネギ中毒の原因はn-propyl disulfideである」という見解が広く一般に知れ渡るようになり、1994年頃まで主流として長く唱えられていました。

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不思議なのは、なぜ「n-propyl disulfide(エヌ‐プロピル ジルスフィド)」ではなく、「allyl propyl disulfide(アリルプロピル ジスルフィド)」が原因とされているのか、ですが、その部分については文献を見つけられなかったので、ある獣医さんのブログから引用させていただきます。

しかし実際は、ある論文で「アリルプロピル ジスルフィド allyl propyl disulfide」が原因物質らしいが、それ自体を入手することができず、組成が近い物質(n-propyl disulfide)で犬に貧血を起こすことに成功した事が一人歩きし。

その結果タマネギ中毒の原因は「アリルプロピル ジスルフィド allyl propyl disulfide」である。となってしまったようです。

参照アニウェル犬と猫の病院 犬と猫のタマネギ、ネギ中毒について。(本当の原因物質とは?)(https://www.aniwel.com/news/vm/2014/2811/)

いずれにしろ、現在ではそのいずれもが「中毒を引き起こす唯一の原因物質とはいえない」とされていますので、この点についてはこれ以上の深入りはしないことにします。

なぜ、いずれもが唯一の原因物質性を否定されているのか。

それは、ジルスフィドが揮発性の化合物だということに関係しています。

揮発性とは、常温常圧で空気中に揮発(蒸発)しやすい性質のこと。

すなわち、ジルスフィドは時間が経つと揮発してなくなってしまう化合物なのです。

ということは、仮にジルスフィドのみが影響しているとするならば、ハンバーグなど長い時間をかけて調理したものでは中毒物質はすでに揮発してなくなっているはずで、犬が誤って食べてしまってもタマネギ中毒は起こらないはずです。

しかし、実際には加熱しようが長時間放置しようが中毒物質はなくなりません。

ということは、タマネギ中毒の原因物質は揮発性の「n-propyl disulfide」の他に不揮発性かつ耐熱性のある、別の化合物も影響しているのではないか。

そう考えた北海道大学の大和修氏が発見したのが「有機チオ硫酸化合物」になります。

ちなみに、「有機チオ硫酸化合物」に含まれる化合物には

  1. sodium trans-1-propenylthiosulfate
  2. sodium cis-1-propenylthiosulfate
  3. sodium n-propylthiosulfate

の3種がありますが、このうちの【3.sodium n-propylthiosulfate】を使ったin vitro実験で赤血球酸化障害活性が認められたことから、有機チオ硫酸化合物をタマネギ中毒の原因物質として同定しています。

(※in vitro実験……生体を用いず試験管内で行う実験)

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というのがこれまでの流れになります。

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原因物質に関する考察まとめ

以上の流れを簡単にまとめると、

昔は獣医師の間でも「アリルプロピル ジスルフィド」がタマネギ中毒の原因物質として認識されていた。

しかし、「アリル~」も有毒物質には違いないが揮発性の化合物であるため、これのみを中毒の原因と考えると加熱処理済のネギ類でもタマネギ中毒の症状が起こることを説明できない。

そこで、再度調査したところ、ネギ類には「有機チオ硫酸化合物」という物質も含まれていることが判明した。

こちらの物質は非揮発性かつ耐熱性の化合物であるため、加熱したネギ類でも「タマネギ中毒」の症状が起こることが説明できる。

犬猫がタマネギ中毒を起こすのは、ほとんどの場合、生野菜ではなく、加熱した料理の誤食が原因であるが(辛みの強い生のネギ類を好んで食べる犬猫はいないと考えられるため)、加熱した料理でも残っている中毒成分は「アリル~」ではなく「有機チオ硫酸化合物」である。

よって、タマネギ中毒の原因物質は「有機チオ硫酸化合物」である、とする見解が現在の主流である。

という感じになり、私自身も現在の主流であるこの見解を支持しています。

参照化学と生物「イヌのタマネギ中毒」 Vol.32、No.10、1994
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/32/10/32_10_620/_pdf)

タマネギ中毒について

タマネギ中毒で見られる症状

元気がない、下痢、嘔吐などの症状がはじめにみられることが多いようです。

くわえて貧血、心拍数の増加、呼吸困難、血尿、血便などの症状が見られる場合には、ネギ類の摂取量がかなり多いことを示しています。

子犬

症状があらわれるまでの時間

摂取した量にもよりますが、通常、タマネギ中毒の症状が現れるまでには1日ないし数日かかることが多いとされます。

中毒物質によって赤血球が破壊されれば、身体中に酸素が行き渡らなくなります。

酸素が行き渡らなくなれば、エネルギーを作り出すことができなくなり、エネルギーが作り出せなければ、脳も筋肉も内臓も、身体中の何もかもの活動がストップしてしまいます。

対応が早ければ早いほど、中毒症状を最低限度で食い止めることができます。

ネギ類の摂取に気づくことができたならば、できるだけ早急な対応をお願い致します。

タマネギ中毒を起こす量

タマネギ中毒については「どれだけ摂取したか」という容量依存性ではなく、その子その子のもつ感受性によって症状の度合いが異なります

ですので、一概に何gという数値基準はなく、少量でも症状が出る可能性はあります。(反対に、ある程度のネギ類を摂取しても表面上に何ら症状が出ない子もいます。)

タマネギ中毒の報告事例

漠然とした話ではいまいちよくわからないと思いますので、実際にどの程度の摂取で、どのような症状が出たのか、各種データをまとめてみます。

【Case.1】

延べ24頭の成犬について、生またはボイルしたタマネギを、イヌの体重1kgに対して5~15gを隔日、または連日給与したところ、10gの隔日または連日給与では軽度の、そして15g隔日または連日給与では重度の貧血症を示すイヌが現われたのである。

症状の軽重には個体差があったが、数日問の実験で、イヌは血尿を排泄して貧血を起し、また食欲減退も認められた。

このとき、貧血発症犬の赤血 球内にはハインツ小体が出現し、脾臓の対体重比が増大して、その最大のものは、この比が対照犬の7倍にも達していた。

そして貧血犬には肝細 胞の核の消失なども観察された。が、これらの症状はやがては回復することも判明した。

参照タマネギと犬のタマネギ中毒

【Case.2】

犬種はハスキーで体重は30キロは越えていたそうです。

金曜日の夜に鍋物の残りとして給餌され、土曜日に元気食欲がないことに気がついたがそのままにしておいた。

日曜にさらに元気がなくなったのでこれはおかしいと思ったが、診療を受けさせることができず、月曜に往診を依頼したが、獣医師が到着するまでに死亡したというものです。

参照:獣医師広報版 タマネギ中毒
(http://www.vets.ne.jp/faq/pc/tamanegi001.html)

【Case.3】

タマネギをイヌに与えた場合には、5~10g/㎏BWでハインツ小体が起こり、30g/㎏BWの生タマネギを3日間与えることですべてのイヌに重度の貧血赤血球ハインツ小体血色素尿症が起こり、中には重度の黄疸に発展5日目には死亡した、という

参照:禁忌食 (その1) —タマネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/14/2/14_2_103/_article/-char/ja)

【Case.4】

食べたタマネギの量はあまり関係なく、遺伝的な要因でタマネギに対する感受性が決まります。

タマネギ入りの味噌汁を一口飲んだだけで、重度の貧血を起こすイヌもあれば、タマネギ2個を食べてしまっても、何ともないイヌもいます。

ネコの赤血球はさらにハインツ小体を形成しやすく、このためネコでもこのような中毒はしばしば認められます。

参照:改訂版 イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(P.621)

タマネギ中毒が起こり得る摂取量は非常に個体差が大きく、「ひとかけら口にして倒れた大型犬」も「けっこう食べたけど、ケロッとしている小型犬」も、どちらのケースもありうるのが現実のようです。

しかし、この中毒症状は血液と反応して起こる生理反応ですので「食べても平気」な子は存在しません。

「ケロッとしている」という場合もあるかと思いますが、これは症状が表面にでていないだけで血液中では軽度の溶血は起こっているはずです。

しばらくすると回復するケースが多いようですが、これも個体差があります。愛犬がネギ類を食べた疑いがあるときは、あとで後悔することのないように行動なさってください。

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誤食時の対処法

食べた直後で、まだ口の中にあるようであれば、すぐに吐き出させましょう

飲み込んでしまった場合、かかりつけの獣医師に早急に連絡し、食べた量を伝え指示を仰ぎましょう。

摂取量が多い場合には胃洗浄輸血といった処置が必要になるかもしれません。

よく「塩水で吐かせる」などの方法を見かけますが、実際に犬猫に塩水を飲ませて吐かせるのは、かなり高度なテクニックを要しますので、私はおすすめしません。

過去には死亡例もあります。

たかが一切れ、されど一切れ。

ネギ類を食べたことに気づけたならば、決して素人判断で様子見はせず、必ず獣医師に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。

まとめ

以上、今回は「ネギ類」についてまとめてみました。

美食家の犬さん猫さんが生のネギ類をかじる、ということは考えにくいですが、放置していたすき焼きの残り汁をなめていた、BBQしていたらお肉と一緒に隣のタマネギも勝手に食べていた、などの事故は起こり得ます。

また、ネギ類を切った包丁で犬猫の食事を作ってしまった、ネギがはいっている料理の煮汁を犬猫のご飯の味付けに使ってしまった、などのうっかり事故もよく聞く話です。

「タマネギ中毒」は保護者が気をつけてさえいれば、起こりえない中毒です。

愛犬の健康のため、「ネギ類」の取り扱いには十分お気をつけくださいね。

 

最後までお付き合い、ありがとうございました(´v`)

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