毎日、お疲れさまです。
さて、今回のテーマは、タマネギなどネギ類についてまとめていきます。
犬や猫にネギ類がよくないということは、すでに多くの方の知るところとなっています。ご存じのことが多いかもしれませんが、復習のつもりでお付き合いいただければ幸いです。
今、愛犬が【玉ネギなど】を食べちゃったという方へ
- 症状がでる量に個体差が大きく、何g食べたから危険とはいえない
- 私ならすぐに動物病院に連れて行って血液検査をしてもらう
- 血液検査をすれば貧血(玉ネギ中毒)をおこしているか確認できるため
【ネギ類】に該当する植物
- アサツキ(浅葱)
- セイヨウネギ(西洋葱)
- ワケギ(分葱)
- 玉ネギ(玉葱)
- 長ネギ(長葱)
- ニラ(韮)
- ニンニク、ギョウジャニンニク(行者大蒜)
- ノビル(野蒜)
- ラッキョウなど
【ヒガンバナ科 ネギ亜科 ネギ属】に属するものをすべてふくみます。
Q.犬猫が「ネギ類」を摂取するとどうなるの?
A.【玉ネギ中毒】になる可能性があります
これらネギ類には、複数の【有機チオ硫酸化合物】という物質が含まれています。
これが犬や猫の体のなかに入ると、赤血球のヘモグロビンを酸化させ【ハインツ小体】という物質に変えてしまいます。
ハインツ小体に変化してしまったヘモグロビンは、脾臓などで壊され溶血します。
文字どおり血が溶かされてしまうため、赤血球の数が急激に減少。重度の貧血を引きおこします。
これが、いわゆる【玉ネギ中毒(ネギ中毒)】という状態です。
有機チオ硫酸化合物に関する詳しい解説はこちら【ペットフード辞典:有機チオ硫酸化合物】
玉ネギ中毒について
玉ネギ中毒で見られる症状
初期症状
- 元気がない
- 下痢、嘔吐など
食べた量がかなり多い場合
- 貧血
- 心拍数の増加
- 呼吸困難
- 血尿、血便など
- 最悪の場合、死にいたることもある
症状があらわれるまでの時間
食べてしまった量にもよりますが、通常、玉ネギ中毒の症状が現れるまでには1日ないし数日かかることが多いとされます。
中毒物質によって赤血球が壊されれば、身体中に酸素が行き渡らなくなります。
酸素が行き渡らなくなれば、エネルギーを作り出すことができなくなり、エネルギーが作り出せなければ、脳も筋肉も内臓も、身体中の何もかもの活動がストップしてしまいます。
対応が早ければ早いほど、中毒症状を最低限度で食い止めることができます。
ネギ類を食べてしまったことに気づくことができたならば、できるだけ早急な対応をお願い致します。
玉ネギ中毒をおこす量は個体差が非常に大きい
玉ネギ中毒については「どれだけ摂取したか」という容量依存性ではなく、その子その子のもつ感受性によって症状の度合いがことなります。
ですので、一概に何gという数値基準はなく、少量でも症状が出る可能性はあります。
反対に、ある程度のネギ類を摂取しても表面上に何ら症状が出ない子もいます。
どのくらいの量で、どんな症状が出ているか【報告事例】

そうはいっても、ある程度の目安は知りたい

では、実際にどのくらい食べたら、どんな症状が出たのか、報告例を見てみましょう
【Case.1】
24頭の成犬について、生またはボイルした玉ネギを、イヌの体重1kgに対して5~15gを1日おき、または毎日食べさせたところ、1日おきに10g食べた犬または毎日食べた犬では軽度の、1日おきに15g食べた犬または毎日食べた犬では重度の貧血症をしめす犬があらわれた。
症状の軽重には個体差があったが、数日問の実験で、犬は血尿して貧血をおこした。また食欲減退も認められた。
このとき、貧血を発症した犬の赤血球内にはハインツ小体が出現し、脾臓の対体重比が増大して、その最大のものは、この比が対照犬(おそらく玉ネギを食べていない犬)の7倍にも達していた。
貧血をおこした犬には肝細胞の核の消失なども見られたが、これらの症状はやがては回復することも判明した。
【Case.2】
犬種はハスキーで体重は30キロは越えていた。
金曜日の夜に鍋物の残りとして食べ、土曜日に元気食欲がないことに気がついたがそのままにしておいた。
日曜にさらに元気がなくなったのでこれはおかしいと思ったが、診療を受けさせることができず、月曜に往診を依頼したが、獣医師が到着するまでに死亡した。
【Case.3】
玉ネギを犬に与えた場合には、5~10g/㎏BWでハインツ小体がおこる。
30g/㎏BWの生玉ネギを3日間与えることですべての犬に重度の貧血、赤血球ハインツ小体、血色素尿症がおこり、なかには重度の黄疸に発展し、玉ネギを与えてから5日目には死亡した。
【Case.4】
食べた玉ネギの量はあまり関係なく、玉ネギに対する感受性は遺伝的要因で決まる。
玉ネギ入りの味噌汁を一口飲んだだけで、重度の貧血をおこす犬もあれば、玉ネギ2個を食べてしまっても、何ともない犬もいる。
猫の赤血球はさらにハインツ小体を形成しやすく、このため猫でもこのような中毒はしばしば認められる。
※以上の報告はデータは引用していますが、文章はわかりやすいように変えています。
まとめると、
あらためて、これらの報告からもわかるように、玉ネギ中毒がおこる可能性のある摂取量はとても個体差が大きいことがご理解いただけるかと思います。
「ひとかけら口にして倒れた大型犬」も「けっこう食べたけど、ケロッとしている小型犬」も、どちらのケースもありうるのが現実のようです。

ヒトでいうアルコールみたいですね

個体差という意味では、たしかに
「症状がない」は「中毒をおこしていない」という意味ではない
この中毒症状は血液と反応しておこる生理反応です。
ということは、理論上、食べても平気な子は存在しません。
「ケロッとしている」という場合もあるかと思いますが、これは症状が表面にでていないだけで、血液のなかでは軽度の溶血はおこっているはずです。
しばらくすると回復するケースが多いようですが、これも個体差があります。
愛犬がネギ類を食べた疑いがあるときは、あとで後悔することのないように行動なさってください。
誤食時の対処法
まだ口の中にあるようであれば、すぐに取り出してください。
飲み込んでしまった場合、かかりつけの獣医師に早急に連絡し、食べた量を伝え、その後の指示をあおぎましょう。

ただ、私なら連絡せずに動物病院に直行します

診ないとわからない、っていわれる可能性高いですからね
食べた量があまりにも多い場合には胃洗浄や輸血といった処置が必要になるかもしれませんが、それほどではない場合、血液検査をしてみると玉ネギ中毒(貧血)かどうか調べることもできます。
なお、たまに「塩水を飲ませて吐かせる」などの方法を推奨しているサイトを見かけますが、私はおすすめしません。
まとめ
美食家の犬や猫が生のネギ類をかじる、ということは考えにくいですが、

放置していたすき焼きの残り汁をなめていた

ネギが入っているの忘れて犬のご飯にまぜてしまった

庭で焼肉していたらお肉と一緒に玉ネギも食べていた
などの事故はしばしばおこります。
もし、ネギ類を食べたことに気づけたならば、決して素人判断で様子見はせず、できるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。
玉ネギ中毒は保護者が気をつけてさえいれば、起こりえない中毒です。
愛犬の健康維持のため、ネギ類の取り扱いには十分お気をつけください。
最後までお付き合い、ありがとうございました(‘v’)
・玉ネギと犬の玉ネギ中毒(https://www.jstage.jst.go.jp/article/nogeikagaku1924/54/3/54_3_234/_pdf/-char/ja)
・獣医師広報版 玉ネギ中毒(http://www.vets.ne.jp/faq/pc/tamanegi001.html)
・禁忌食 (その1) —玉ネギなどのネギ属とイヌ・ネコの健康(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/14/2/14_2_103/_article/-char/ja)
・改訂版 イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(P.621)
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