毎日、お疲れさまです。
今回は、犬についている「ノミ」や「ダニ」から人へ感染する病気の中でも「マダニ」が媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」についてまとめていこうと思います。
- 飼い犬や野良猫と接触した人間が感染しており、死者も出ている
- 感染予防として野生動物に触れない、マダニのいる山中に薄手の洋服で行かない
- 原因や症状に心当たりがある場合、早急に病院を受診しましょう
以下、詳しく書いていきます。興味があれば、お付き合いくださいませ。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染症の感染事例報告
まずは、こちらのニュースをご一読ください。
飼い犬から感染したケース
厚生労働省は10日、飼い犬と接触した徳島県の40代男性がマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症していたと発表した。男性と犬はともに回復している。犬からヒトへの感染事例が明らかになるのは初めて。
■参照:日本経済新聞HP(2017/10/10 18:13)
野良猫から感染したケース
厚生労働省は24日、野良猫にかまれた50代の女性がマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」を発症し、10日後に死亡していたと発表した。かまれたことが原因とみられ、猫からヒトへの感染事例が明らかになるのは初めて。
厚労省や国立感染症研究所によると、女性は西日本に在住。昨年、衰弱した野良猫を動物病院に連れて行こうとして手をかまれた。数日後にSFTSを発症したという。女性がダニにかまれた形跡はなく、感染研は野良猫が最初に感染し、女性にうつしたとみている。
■参照:日本経済新聞HP(2017/7/24 18:11)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
SFTSウイルスを保有するマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症です。
本来は「マダニ→ヒト」経由で感染する病気ですが、「マダニ→犬→ヒト」「マダニ→猫→ヒト」のように間に動物が介在するパターンでの感染もありうることが上記のニュースでおわかりいただけたと思います。
ちなみに、このウイルスはすべてのマダニが保有しているわけではありません(噛まれたら必ず発症する、というわけではない、ということです)。
発見の経緯
2011年:中国で新種のウイルスとして発見される。
2012年秋:日本国内で海外渡航歴のない人が(日本固有の)SFTSウイルスに罹患し、その後死亡。
2013年1月:上記の情報が初めて確認、報告される。
以降、SFTSウイルスに罹患していると思われる症例が確認されるようになり、2017年7月26日までに280名(生存者:222名、死亡者:58名)の感染報告が挙がっています。
潜伏期間
6日〜2週間。
(ヒトでの)主な初期症状
発熱、食欲低下、全身の倦怠感、嘔吐、下痢、腹痛。
その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こすこともあります。
(イヌでの)主な初期症状
一般的に無症状(不顕性感染)です。
まれに食欲不振、発熱、白血球減少症などの症状が認められることがあります。
致死率
6.3〜30%。
劇症型レンサ球菌感染症(通称「人食いバクテリア」)と同程度の致死率です。
30%の致死率とは10人に3人が死亡する割合ですので、決して低い値とはいえません。
ワクチン・治療方法
有効な薬剤やワクチンはありません。
治療としては「対症療法」を行うことになります。
▼対症療法とは
発症している症状に対応する治療を行うことをいいます。熱が出ていれば解熱剤が投与され、下痢があれば止瀉薬(下痢止め)が投与されることになります。
感染経路
- マダニ → ヒト
- 感染したイヌの体液 → ヒト
- 感染したネコの体液 → ヒト
これについては、ひとまず以下の文章をどうぞ。
問6 ネコやイヌからSFTSウイルスに感染する危険性があると言うことですか?
答
ヒトにSFTSウイルスを感染させるリスクのあるネコなどは、ヒトのSFTSで認められる症状(問36 参照)を呈していたことが確認されており、健康なネコなどからヒトがSFTSウイルスに感染することはないと考えられます。
また、屋内のみで飼育されているネコについては、SFTSウイルスに感染する心配はありません。
現時点においてはまれですが、SFTSウイルスに感染し、発症している動物の血液などの体液に直接触れた場合、SFTSウイルスに感染することも否定できません。
なお、ヒトのSFTSで認められる症状を呈していたネコに咬まれたヒトがSFTSを発症し、亡くなられた事例が確認されていますが、そのネコから咬まれたことが原因でSFTSウイルスに感染したかどうかは明らかではありません。
■引用先:厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html)
この引用記事は、厚生労働省のHPに掲載されているQ&Aになります。
上記の二番目のニュース記事(感染源は野良猫)では「国立感染研究所は野良猫が最初に感染し、女性にうつしたとみている」というような表記をしています。
しかし、厚労省としては、そのネコがSFTSウイルスを保有していたかどうかの検査ができていないことなどから「発症している動物の血液などの体液に直接触れた場合、SFTSウイルスに感染することも否定できない」としつつも、今回のケースについては「猫から咬まれたことが原因でSFTSに感染したかどうかは明らかではない」という立場をとっているようです。
いずれにしろ、100%野良猫から感染したとはいえなくとも「発症している動物から感染しないとはいえない」いうのは間違いありませんので「用心するに越したことはない」ということでここは一旦締めておきたいと思います。
国立感染症研究所の調査結果
野生動物におけるSFTSウイルス抗体保有状況
国内で2012年末に最初の患者が報告された山口県で捕獲されたイノシシ(370頭)とシカ(502頭)における重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)に対する抗体保有率を調査した(図1)。その結果、イノシシは8.6%、シカは43.2%の陽性率であった。
野生動物および飼育犬におけるSFTSV感染状況の調査(※V…virusの略)
アライグマ671頭、サル11頭、飼育犬136頭の血清からSFTSV遺伝子の検出を試みた。その結果、アライグマ16頭(2.4%)、サル1頭(9%)、イヌ2頭(1.5%)の血液中にウイルスを保有していることが判明した。
一連の調査から判明した所見
1.ヒトを含めた多くの動物がSFTSVに感染
2.野生動物での蔓延がヒトへの感染リスク
3.飼育動物にもSFTSVが感染
4.動物は血液中にSFTSVを保有している可能性
5.SFTSV感染が拡大している地域の存在今後への提言
1.野生動物でのSFTSV感染の調査を継続し、ヒトへの感染リスクを知ることが重要である。
2.動物がSFTSVに感染している可能性を考えて、動物取扱者は感染リスクを回避する防御法をとることが必要である。
3.患者が発生していない地域でも今後SFTSVが侵入する可能性がある。■参照元:https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2342-related-articles/related-articles-433/6320-dj433a.html
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染しないために気をつけること
② SFTSウイルス保有の疑いのある動物との接触を避ける。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)にかからないためには、マダニとの接触をさける必要があります。
そのために大切なことは、愛犬のマダニ対策!
愛犬はもちろん、ヒトが重症熱性血小板減少症候群(SFTS)にかからないためにもダニ対策は必ず行うようにしておきましょう。
また、上記のニュースでは犬または猫との接触で感染した疑いがあるとのことですが、国立感染研究所の調査の通り犬や猫に限らず、多くの野生動物がSFTSウイルスを保有している可能性があります。
野生動物と接触する際にも、噛みつきなどによるケガのほかに、体液にも触れないよう十分に気を付けるようにしてくださいね。
最後までお付き合い、ありがとうございました('v')
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