犬の療法食を自己判断で使用(誤使用)したことによる健康被害について

療法食の誤使用による健康被害ペットフード
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毎日、お疲れさまです。

近年、量販店やホームセンターなど身近な場所で、一般的なペットフードに交じって療法食が並んでいるのをよく見かけるようになりました。

療法食は医薬品ではないものの、愛犬の健康状態に与える影響は大きく、獣医師の指導に基づかない、誤った使用による健康被害も報告されています。

そこで今回は療法食について、以下のポイントを中心にまとめてみました。

  • 総合栄養食との違い
  • 療法食を正しく使用することで症状が改善した例
  • 誤使用によって健康被害が出た例
  • 量販店やネットなどで購入することの是非

興味があれば、お付き合いくださいませ。

療法食と総合栄養食の違い

獣医療法食評価センターの療法食ガイドラインによると、療法食とは、

特定の疾病または健康状態の犬猫の栄養管理のため、栄養成分の量や比率が調整又は特別な方法で製造され、一般的なペットフードとは異なる特別な管理が必要なペットフード

と定義されています。

一方、総合栄養食とは、AAFCO(米国飼料検査官協会)で定められた栄養基準(分析試験または給与試験)をクリアしたものをいい、そのペットフードと水だけで成長段階における健康を維持できるペットフードを指します。

総合栄養食として認められたフードのパッケージには、「この商品は、ペットフード公正取引協議会※の定める分析試験(または給与試験)の結果、総合栄養食の基準を満たすことが証明されています。」と記載されています。

※ペットフード公正取引協議会がAAFCOの基準を採用しているため、ペットフード公正取引協議会の定める分析試験とAAFCOの定める分析試験は同じものです。
療法食:特定の病気のために栄養成分が調整されたペットフード(治療のため、あえてAAFCOの基準を満たしていない栄養成分もある)

総合栄養食:そのペットフードと水だけで健康を維持できるフード

療法食の在り方検討委員会

平成23年度、公益社団法人日本獣医師会は小動物臨床部会に【療法食の在り方検討委員会】を設置し、療法食の使用などについて全国の地方獣医師会に聞き取り調査を行いました。

その結果、犬で19例猫で18例の「健康状態に何らかの影響を与えた事例」の報告が上がっています。

以下、療法食を正しく使用することで症状が改善した例、そして誤った使用で健康被害が出てしまった例をみていきましょう。

療法食を正しく使用することで症状が改善した例

Case1.15歳、ヨークシャーテリアの場合

  • 約2年ほど、尿石の再発防止用の療法食フードを食べていた
  • 腎不全の所見が認められたため、その療法食を半分に減らして、不足するエネルギーをおかゆで補充(同時に治療薬も投与)
  • 腎機能の改善が認められたので、治療薬の投与を継続しつつ、慢性腎不全管理用の療法食に切り替えたところ、腎機能が改善した

▼このケースの良かった点

  • きちんと検診に行ったために、腎不全の所見に気づくことができた
  • 獣医師が適切に食事療法について指導した
  • 獣医師の食事療法に保護者がきちんと従った
  • 保護者と犬さんが協力して、療法食の切り替えを適切に行えた

Case2.6歳6ヶ月、雑種猫の場合

  • ストルバイト結石で来院したため、結石を溶解する療法食を給与した
  • ストルバイト結石が溶解したので、その後は、結石の再発防止用の療法食に変更し、療法食を続けるよう獣医師が指示する
  • その後、来院が途絶える
  • 保護者の自己判断で「低マグネシウム」と書かれた(療法食でない)フードを給餌していたところ、結石が再発
  • 同様の食事療法を繰り返したところ、その後の再発はない

▼このケースの良かった点

  • 結石が再発したとき、(行きにくかったと思うが)最初にかかった動物病院に診察に行った
  • 自己判断で療法食を与えていなかったことを、ちゃんと獣医師に伝えた
  • その後、獣医師の食事療法にきちんと従った
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療法食の誤使用によって健康被害が出た例

Case3.年齢不明、雑種犬の場合

  • 肥満のため、カロリー制限の療養食を推奨
  • その後、来院が途絶える
  • 一年後、再来した際、重度に痩せていて低タンパク血症におちいっていた
  • 聞き取りにより、同じ目的の療法食をホームセンターで購入し、自己判断で与え続けたことが判明した

▼このケースの悪かった点

  • カロリー制限フードを与え続けることのデメリットやフードの推奨使用期間などについて、獣医師の説明が不十分だった可能性がある
  • ダイエット目的だったにもかかわらず、保護者が愛犬の体重を測定するなどのチェックを怠り、身体の変化に気付いていない

Case4.6歳、シャム猫の場合

  • ストルバイト結石による血尿で来院したため、ストルバイト結石溶解用の療法食の給与を指導した
  • その後、来院が途絶える
  • 3年後、同じく血尿で来院。今度はシュウ酸カルシウム結石が原因の血尿
  • 聞き取りにより、自己判断で3年前に指導された療法食を通販で購入し、与え続けていたことが判明する
  • この療法食を長期使用していたことが、シュウ酸結石の形成を助長したと推察される

▼このケースの悪かった点

  • (他院にかかっていたかもしれないが)3年間検診をしていない
  • 自己判断でストルバイト結石用の療法食を与え続けた
  • ストルバイト結石の溶解を目的とする療法食の推奨使用期間は5~12週であることを獣医師が保護者に十分説明できていなかった(理解してもらえていなかった)可能性がある

同じ診断でも使用すべき療法食が違うこともある

ストルバイト結石か、シュウ酸結石か

上述のCase.4を見てください。

3年前と3年後の血尿で、原因は同じ「結石」でした。にもかかわらず、「結石用のフードを食べ続けたことが3年後の結石の形成を助長したと考えられる」と書かれています。

実は、原因となる結石がストルバイト結石シュウ酸結石かで、尿のPHをどうしなければならないかが、まったく違うのです。

ストルバイト結石が原因の場合、尿を酸性化する特性を持つフードを与えなくてはいけません。しかし、シュウ酸結石が原因の場合、尿をアルカリ化する特性を持つフードを与えなければならないのです。

結石用のフードを与え続けていたにもかかわらず結石が再発したのは、そのためでした。

肝臓疾患のケース

肝臓疾患の場合、

  • 急性肝炎(急性期)→タンパク質は与えない
  • 肝炎などの肝臓回復期→タンパク食を与える
  • 肝性脳症(肝硬変)が疑われるとき→タンパク食で維持する

など、肝臓の微妙な状態変化によって、タンパク質の必要量が大きく変化します。

「肝臓の数値が悪い」だけで、愛犬に与えるべき療法食を決めると、取りかえしのつかない事態になるかもしれません。

インターネットなどで療法食を購入することの是非

そもそも量販店などで販売してもいいの?

元々はメーカー→卸業者→獣医師→保護者と流通することが想定されていた療法食ですが、動物の健康状態に大きな影響を与えるにもかかわらず、法令上、一般のペットフードと同じように区分されています。

医薬品ではないため、薬事法等で規制されることもありませんし、また動物病院以外での販売を禁じることは「独占禁止法」に抵触するため現状では規制できません

ということで、量販店やインターネット上で広く販売されていても、現在のところ法的な問題はありません(が、おそらく使用方法を間違えて甚大な健康被害が出ても、販売先の量販店は責任を取ってくれないでしょう)。

▼療法食の在り方検討委員会に寄せられた報告
某ディスカウントショップの療法食相談コーナーで「肝臓の数値が悪いが、どれが良いか」と尋ねたところ、本来、肝臓サポートの療法食をもちいて食事療法を行うのは、重篤な高アンモニア血症になっている場合のみにもかかわらず、それを確認することなく肝臓サポートを薦められた、という報告事例が寄せられています。
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なぜ自己判断で療法食を食べさせてはいけないのか

総合栄養食のペットフードなどと異なり、療法食には「推奨使用期間」というものが定められています。

一例をあげると、以下のとおりです。

慢性腎不全の場合の腎機能サポート当初は6ヶ月以内
犬のストルバイト尿石の溶解5~12週
急性腸吸収障害の軽減1~2週
栄養回復、回復期回復が達成されるまで
骨関節炎の場合の関節代謝サポート当初は3ヵ月以内

このように、目的とする症状改善によって、療法食の推奨使用期間はバラバラに設定されています。

さらに、例えば「結石があるが、腎臓もよくない」など、他に別の疾患がある場合には、もっと短い期間で使用継続してもいいか確認する必要も出てきます。

療法食は万能健康フードではありません。

獣医師の判断によらない使用によって、愛犬の状態がますます悪化してしまう可能性も十分にあるのです。

ネットで購入する場合には、獣医師に確認を!

私個人の意見としては、量販店やインターネットなどで購入することが悪いことだとは思いません

もちろん、個人経営の動物病院にとっては、療法食フードの販売も大事な収入源の一つだと思います。しかし、食事療法に関して何より大事なことは続けることです。

動物病院で購入するより、インターネットで購入するほうが安ければ、そちらを選ぶことは消費者として自然なことだと思います。

また、個人経営の動物病院では在庫置き場がないところが多く、注文して後日受取になることが多々あります。

その場合、注文先→動物病院→保護者のルートで商品を受け取るより、通販で注文した方が早く手元に商品が届く可能性があります。早く商品が届くということは、それだけ早く食事療法がはじめられるということです。

くわえて、販売数も量販店ほどではないため、在庫があったとしても消費期限が迫っている場合も考えられます。

期限内に消費しきれなければ無駄になってしまいます。動物病院で購入する場合は、消費期限の確認もしておいた方が良いと思います。(消費期限を確認しない動物病院は無いと思いますが、念のため)

入手時期、費用、消費期限ともに動物病院で購入するのも、インターネットで購入するのも変わらない場合や、少しでも動物病院の利益になればと考える場合などは、動物病院で購入されると良いと思います。

まとめ

獣医師に療法食による食事療法を薦められた場合、量販店やネットなどでの価格を調べてから購入したいと思ったならば、動物病院での販売価格と入手時期をお尋ねした上で、正直にその旨を伝えてください。

獣医師に伝えづらければ看護師さんに伝えましょう。

前述のとおり、食事療法においては大切なのは、獣医師の指導に従って、必要な限りきちんと続けることです。療法食は高いからといって続かなければ、意味がありません。

インターネットで購入した方が自分にとってメリットが大きいと感じたら、そちらで購入したって構わないのです。

ただし、

  • 獣医師が薦めた療法食と違うものを購入したり、
  • 自己判断で続ける、あるいは止めることは絶対にしないでくださいね。

最後までお付き合い、ありがとうございました('v')

【参照】
■療法食ガイドライン,一般社団法人獣医療法食評価センター,改定2016年7月
■療法食の適正使用に向けた課題と対応,公益社団法人日本獣医師会,療法食の在り方検討委員会報告,平成25年6月
■日本ペット栄養学会テキストブック

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