毎日、お疲れさまです。
さて、今回は犬にとって必要なビタミンについてまとめてみました。
ビタミンと一言にいってもその種類や機能はさまざまで、「たくさん摂ればいい」というものでもないのも厄介なところ。
各ビタミンに関する詳細は今後個別にまとめていく予定ですが、ここでは大まかに犬にとって必要なビタミンは何か、それぞれをどの程度摂っていればいいのか(推奨される量はどのくらいか)、摂りすぎるとどうなるのか、反対に足りないとどうなるのか、そもそもビタミンとは何なのか、などについてまとめたいと思います。
興味があればお付き合いくださいませ。
ビタミンとは
ビタミンとは、正常な生理機能を行うために補助的に必要となる有機化合物です。
「補助的に」とあるように、直接体の栄養(エネルギー源)になるものではなく、体内で物質同士が結合したり、分解したりするときに必要となるものになります。
さながら「接着剤」や「ネジ」、はたまた「潤滑油」といったところですね。
というわけで、ビタミンが不足すると体の維持のために必要な結合や分解といった作用ができず、身体中のいたるところでさまざまなトラブルが発生してしまいます。
\ なんか調子悪い……気がする…… /
では、たくさん摂ったほうがいいかというとそうでもなく、物でも「接着剤」をつけすぎると動かなくなるように、ビタミンの中には過剰に摂取するとかえって体に悪影響を及ぼしてしまうものもあります。
ビタミン類を与える場合には、まずはその性質や機能を知っておくことが大切になります。
ビタミンの種類
ビタミンには大きくわけて「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」の二種類があります。
そのビタミンが脂溶性か水溶性かで、摂取したビタミンが体内に残る程度(蓄積率)や、過剰摂取した場合の体への影響(毒性)も大きく異なります。
ということで、まずはビタミンの「脂溶性と水溶性」の違いについて記載していきます。「もう知ってるよ」という方は、各ビタミンの説明まで読み飛ばしてくださいね。
脂溶性ビタミン
読んで字のごとく「水に溶けにくく、脂(油脂)に溶けやすい性質のビタミン」をいい、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがこれに含まれます。
脂がないと溶けませんので、脂質を摂らずに脂溶性ビタミンだけを摂っても吸収率はよくなく、脂溶性ビタミンを体に効率よく吸収するためには一緒に脂質を摂ることが必要となります。
摂取された脂溶性ビタミンは脂質と一緒に小腸から吸収され、おもにリンパ管を経て肝臓に蓄積されます。そして、必要に応じて血液中に放出され、タンパク質と結合して各組織に移動します。
脂溶性ビタミンは体内に蓄積しやすい特徴があるため、過剰症を起こしやすく、また、毒性も水溶性ビタミンに比べて高いですので、【体に蓄積せず、欠乏もしない量】を管理して与えることが大切となります。
水溶性ビタミン
一方こちらは「水に溶けやすい性質のビタミン」をいい、ビタミンB群、ビタミンCがこれに含まれます。
調理前に食材を洗ったり、水で茹でたりすることでも簡単に失われるほど水に溶けやすく、動物の体内に入ってからも体内への蓄積はされることはありません。
なお、ビタミンB群の多くは「酵素」の作用を補う「補酵素」としての機能をもつため、ヒトと同じく、犬も必ず摂取しなければならないビタミンの一種ですが、ビタミンCについては、ヒトとちがって、犬猫は自らの体で作り出すことができるため、とくに摂取する必要はないとされています。
水に溶けやすく多く摂取された分については尿で排出されてしまいますので、過剰症を起こす危険はほとんどありませんが、反対にビタミンB群の不足による欠乏症を起こしやすいため注意が必要です。
(ビタミンCは摂取からおよそ3時間ほどで体外に排出されます。)
脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの相違点
脂溶性(ビタミンA、D、E、K) | 水溶性(ビタミンB群、C) | |
体の外へ排出 | されにくい | されやすい |
体の中に | たまりやすい | たまりにくい |
毒性 | 高い | 低い |
ビタミンについて考えないといけないケースと注意点
さて、ビタミンについては「全員が問題視しないといけない」というわけではありません。
摂取が必要なビタミンを計算し、適量を守るように計算しなければならないのは
です。
「総合栄養食」あるいは「療養食」とパッケージに書かれたペットフードだけを与えているご家庭では、ビタミンについては特に考える必要はありません。
フードに記載されたビタミンの全部が摂取されるというわけではありませんが、それでも総合栄養食のフードを適量摂取さえしていれば、ビタミン類の過不足が起こることはないように計算されているからです。
なお、ペットフードだけしか与えていなくても、そのフードが「総合栄養食」でなければビタミン類(その他の栄養も)の過不足が起こる可能性はあります。
フードに「総合栄養食」の記載がない場合は、
・ビタミンを始めとした各種栄養バランスを考えた手作り食に変える
・栄養管理のされた手作り食と、今のフードをバランスよく与える
上記のいずれかに変えることを強くすすめます。
各ビタミンの推奨値はあくまで健康な子に推奨される量です。内臓系統などに疾患を持っている子に、上記のようなビタミンを含むものを与える場合には、必ず獣医師と相談のうえ、獣医師の指示にしたがった量を与えるようにしてくださいね。
それぞれのビタミン推奨量
計算方法について
はじめに、各数値の見方について説明します。
すべての数値は代謝エネルギー1,000kcalあたり●●という表記をしています。
代謝エネルギーとは、口から摂取した総エネルギーのうち、便と尿として排出されたエネルギー分を引いたものになります。
文字のとおりの「体を動かすためのさまざまな作用(代謝)に使えるエネルギー」のことですね。
ドッグフードを与えている場合にはパッケージに記載してあります。
このフードの場合、代謝エネルギーはフード100gあたり392kcal。
このフードを1日に210g食べている子(以下「しば太郎」といいます)の場合ですと、1日あたり【392×2.1=823.2kcal】を代謝エネルギーとして摂っている計算になります。
これから説明する各ビタミンの推奨摂取量や上限値などを知るうえで、この「愛犬が1日に何gのエネルギーを摂っているのか」という数値が必要となります。
もし、この数値がわからないという方は以下のページに計算方法をまとめています。
脂溶性ビタミン
ビタミンAについて(脂溶性ビタミン)
ビタミンAの推奨値
犬のビタミンA推奨量(レチノール当量)は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり379㎍になります。
これを、しば太郎の例にしたがって計算すると、
・代謝エネルギー:823.2kcalですので、
(379×823.2)÷1,000=311.99。
ということで、しば太郎に推奨されるビタミンA摂取値は【311.99㎍】ということがわかります。
ビタミンAの上限値
代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり16,000㎍が上限値で、一般的にこの量を超えると中毒症状を起こす危険が高まる、という数値になります。
ただし、この数値はあくまで目安で、下回る量でも中毒症状を起こす場合も考えられます。
推奨量が【379㎍】に対して上限値は【16,000㎍】と大きく差がありますので、1日や2日、1,000~2,000㎍くらいオーバーしても特段問題はないと思いますが、推奨される量を大幅に超えて「1日10,000㎍を毎日摂取している」という状況ですと、ビタミンA過剰症の危険が高まりますので、ビタミンAの与えすぎには十分ご注意ください。
ビタミンAの過剰症と欠乏症
過剰症(中毒症) | 欠乏症 |
骨の奇形|自然骨折|内出血|結膜炎|腸炎|食欲不振|肝臓・腎臓機能低下|食欲不振|皮ふの角質化|赤血球数の減少 | 皮ふ障害|夜盲症(暗所での視界不良)|網膜の変性|免疫機能の低下|眼球乾燥症|腎炎|虚弱|骨の強度低下|食欲不振|体重減少など |
ビタミンDについて(脂溶性ビタミン)
ビタミンDの推奨値
犬のビタミンDの推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり3.4㎍です。
しば太郎の場合ですと、(3.4×823.2)÷1,000=【2.79㎍】が推奨量となります。
ビタミンDの上限値
代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり20㎍が上限値です。
推奨値の6倍とそれほど差がありませんので、推奨値を大きく超えないようご注意ください。
ビタミンDの過剰症と欠乏症
過剰症(中毒症) | 欠乏症 |
高カルシウム血症|血管や心臓などでのカルシウム異常沈着|最悪の場合、死に至ることもある | 低カルシウム血症|クル病・骨軟化症など骨の異常|下半身まひ|運動失調など(※慢性腎疾患があるとVD欠乏症になりやすい。) |
※VD…Vitamin D
ビタミンEについて(脂溶性ビタミン)
ビタミンEの推奨値
犬のビタミンEの推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり7.5mgです。
しば太郎の場合ですと、(7.5×823.2)÷1,000=【6.17mg】が推奨量となります。
ビタミンEの上限値
ビタミンEも脂溶性ビタミンですが、現在のところ、ヒトでも犬でも過剰症の報告はなく、そのため、上限値も設定されていません。
たくさん摂取しても中毒症状は生じにくいと考えられていますが、ビタミンEは植物性油に多く含まれていますので、「ビタミンEを多めに摂ろうとして脂肪分を摂りすぎた」とならないよう注意してください。
ビタミンEの過剰症と欠乏症
過剰症(中毒症) | 欠乏症 |
特になし(中毒を生じにくい) | 細胞の老化|動脈硬化|溶血性の貧血|筋肉が弱くなる|精子の形成障害など |
ビタミンKについて(脂溶性ビタミン)
ビタミンKの推奨値
犬のビタミンKの推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり0.41mgです。
しば太郎の場合ですと、(0.41×823.2)÷1,000=【0.33mg】が推奨量となります。
ビタミンKの上限値
ビタミンKについても、特に上限値は定められておらず、ヒトも犬も過剰症が発生したという報告事例も、現在までのところ特にありません。
ただし、ビタミンKの作用が「ケガや内出血があった時に血を固める」というものですので、「血栓症」や「血液凝固剤」など血液の凝固に関する薬などを服用している子では薬の効果をよくするために摂取が制限されることもあるようです。
現在のところ、上限値は設定されてはいませんが、血液関連の薬を服用している子にビタミンKを多く含む食材などを与えようとする場合には、獣医師に相談のうえ、「許可がでた場合のみ与える」などの措置をとるようにしてください。
ビタミンKの過剰症と欠乏症
過剰症(中毒症) | 欠乏症 |
【ビタミンK1、2】毒性は低い 【ビタミンK3】黄疸・致命的な貧血 | 出血しやすい|血が固まるまでに時間がかかる |
※ビタミンK1,2:天然のもの/ビタミンK3:食品添加物
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンの注意点
これ以降は「水溶性ビタミン」の解説になります。上述のとおり水溶性ビタミンは体に蓄積しにくいため、上限値や過剰症は考えられていません。
水溶性ビタミンで考慮すべきは「欠乏しないよう注意すること」。
ということで、以降は「上限値」および「過剰症」の記載はありません。
ビタミンB1について(水溶性ビタミン)
ビタミンB1の推奨値
犬のビタミンB1の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり0.56mgです。
しば太郎の場合ですと、(0.56×823.2)÷1,000=【0.46mg】が推奨量となります。
ビタミンB1の欠乏症
・(特徴的症状として)脚気※
・浮腫
・神経炎
・心臓肥大
・四肢の失調 など
心不全と末梢神経障害をきたす疾患。
症状として足のむくみやしびれなどが起こるが、これらの症状は、心不全や神経障害を原因とする。
ビタミンB2について(水溶性ビタミン)
ビタミンB2の推奨値
犬のビタミンB2の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり1.3mgです。
しば太郎の場合ですと、(1.3×823.2)÷1,000=【1.07mg】が推奨量となります。
ビタミンB2の欠乏症
ビタミンB2が欠乏すると、
・皮フ炎
・白内障
・体重減少
・食欲不振
などの症状が生じますが、「ビタミンB2だけが欠乏する」ということはほとんどないため、ビタミンB2欠乏症として症状が起こることはまれです。
ナイアシンについて(水溶性ビタミン)
ナイアシンの推奨値
犬のナイアシンの推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり4.25mgです。
しば太郎の場合ですと、(4.25×823.2)÷1,000=【3.50mg】が推奨量となります。
ナイアシンの欠乏症
・皮膚炎
・下痢
・中枢神経異常
・黒舌病
・ペラグラ※
別名「ナイアシン欠乏症」。皮フ炎、下痢、認知症が主な症状。
ビタミンB6について(水溶性ビタミン)
ビタミンB6の推奨値
犬のビタミンB6の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり0.375mgです。
しば太郎の場合ですと、(0.375×823.2)÷1,000=【0.31mg】が推奨量となります。

ビタミンB6の欠乏症
・神経症状
・貧血(軽度)
・筋肉の脆弱化 など
※ビタミンB6の過剰症
他のビタミンB群は過剰摂取しても、ほとんどが腎臓から排出されるため、過剰症はほとんどおこりませんが、ビタミンB6は過剰症を発症することがまれにあります。
過剰症の症状としては、
・運動失調
・筋肉の脆弱化
・平衡感覚の欠如 など。
サプリメントなどを与えている場合には、過剰摂取に注意してください。
ビタミンB12について(水溶性ビタミン)
ビタミンB12の推奨値
犬のビタミンB12の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり8.75㎍です。
しば太郎の場合ですと、(8.75×823.2)÷1,000=【7.20mg】が推奨量となります。
ビタミンB12の欠乏症
ビタミンB12が欠乏すると、
・成長抑制
・神経障害
また、二次的な症状として「葉酸の取り込みを低下させる」、などの症状が生じますが、ビタミンB12もビタミンB2と同じく、単独で欠乏症を起こすことはまれです。(ビタミンB12が足りてないときは、他のビタミンも足りていない状態)
葉酸について(水溶性ビタミン)
葉酸の推奨値
犬の葉酸の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり67.5㎍です。
しば太郎の場合ですと、(67.5×823.2)÷1,000=【55.57mg】が推奨量となります。
葉酸の欠乏症
・悪性の貧血
・白血球の減少
・舌炎
・食欲不振 などがあります。
ビオチンについて(水溶性ビタミン)
ビオチンの推奨値
犬がビオチン欠乏を起こすことはまれなため、NRC※は「犬はビオチンを摂取する必要はない」として具体的な数値として推奨量を定めていません。
一方、猫にはビオチン推奨量が定められており、その数値は18.75㎍とされています。
「犬に生の卵白を与えてはいけない」とよくいわれるのは、生の卵白には【アビジン】というビオチンの吸収を抑制する成分が含まれているためです。
ということで、ビオチン欠乏を起こさないためにも、生の卵白は与えないようにしましょう。

ビオチンの欠乏症
ビオチン欠乏は非常にまれですが、起こった場合には、
・皮ふ炎
・奇形
・成長阻害 などの症状を引き起こします。
パンテトン酸について(水溶性ビタミン)
パンテトン酸の推奨値
犬のパンテトン酸の推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり3.75mgです。
しば太郎の場合ですと、(3.75×823.2)÷1,000=【3.09mg】が推奨量となります。
パンテトン酸の欠乏症
・脂肪肝
・成長抑制
・低コレステロール血症
・抗体反応の低下
・昏睡 などがあります。
コリンについて(水溶性ビタミン)
コリンの推奨値
犬のコリンの推奨量は代謝エネルギー(ME)1,000kcalあたり425mgです。
しば太郎の場合ですと、(425×823.2)÷1,000=【349.87mg】が推奨量となります。
コリンの欠乏症
・脂肪肝
・出血性腎不全
・成長抑制
・胸腺萎縮症 などが起こります。
※コリンの過剰症
コリンもビタミンB6と同じく摂取しすぎると過剰症により「赤血球の減少」という症状を起こすことがあります。
要求量の3倍程度で過剰症を起こす、といわれていますので、コリンの多い食材やサプリメントなどを与える場合には、過剰摂取に注意してください。
まとめ
以上の内容をまとめると、
・ビタミンについて考えないといけないのは、毎日食べているものが「総合栄養食」と書かれたフードだけではない犬さん
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は体に蓄積しやすいため、欠乏症だけではなく過剰症にも注意が必要
・水溶性ビタミン(ビタミンB群)は、すぐに体から出てしまうので欠乏症にならないよう注意が必要(※ビタミンBとコリンは例外)
・犬はビタミンCを体内で作れるので与える必要はない
となります。
とくに、ビタミンAとビタミンDは体内に蓄積しやすく、過剰摂取が問題となることが多いため、サプリメントなどを与える場合には、十分注意するようにしてください。
また、上述のとおり、各ビタミンの推奨値はあくまで健康な子に推奨される量です。再記しますが、内臓系統などに疾患を持っている子に、ビタミン類を与える場合には、必ず獣医師と相談のうえ、獣医師の指示にしたがった量を与えるようにしてくださいね。
最後までお付き合い、ありがとうございました(‘v‘)
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